Sanae'a collection

自分の体験を通じて文章化する事により一層深みのあるノンフィクションを五感で感じて頂きたいと思ってます

私のアジア紀行

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春の木漏れ日に 舞い散る桜の花びら
風に揺れる木々 全てが新しい呼吸を始めているかのよう。白い光を放つ季節新芽が萌えだし花が咲き生命が躍動し始める全身の細胞が喜びに満ち溢れる瞬間、血潮が漲り全神経が 美しい空気に集中し五感が研ぎ澄まされる事を知ります。
優しいひかりに包まれて花も人も夢をみる生命の宴、美しく咲く桜の季節は儚くも短い夢物語。

躍動感溢れる空気を肌で感じる春風は若葉色、萌ゆれば思いあふれる桜色🌸
舞う頃は沢山の想いが照らされます。
季節の移ろいはそれぞれに名残惜しさを感じるもの春を惜しむ気持ちは格別で一雨ごとに緑は深さを増していきやがて新緑の季節に移り変わっていくのでしょう。
幾つかの転機を迎えて頬に触れる季節の優しい風。
まどろみの中で忘れることのない思い出の箱が開かれます。体に刻まれる時の流れがその人をつくり上げる魂なのかもしれません。

切なく桜色が目に映ろう春の風景は心温まり

雨が一つの感情だとしたら季節は価値なのかもしれない。
その感情によって季節は明確に判断され優しい雨は春に向い湿気のある雨は夏に向う。

 

雨…
インドネシアのバリ島にいたときの事を思い出します。
今から10年以上も前のお話。
会社という枠にいた私はその組織に限界を感じ退職願を出してアジアへバックパック一つで旅に出たのです。
その頃の私は無鉄砲でもあり若さ余ってのエネルギーの象徴、転機の訪れ、
ロングバケーションの始まりです。

バリは雨季。
日中はスコールの叩きつけられる雨に美しい緑は鮮やかさを増し生い茂った木々を窓越しで眺めながら
コンドミニアムで過ごす自由で気ままな時間。
自分本来の姿を取り戻し開放的なバリでの生活は
一日中書に耽ったりアーティスティックな快楽に包まれては猿や現地人と戯れる非現実的な世界。
鮮烈な色合いが私の細胞全てに行き渡り雨に濡れると緑が一層輝きを増し油で炒めた青菜の如く色が蘇る。
葉を叩く激しい雨の音や土の香り 
色調豊かな草花。
五感全てが蘇るエキゾチックで贅沢な至福に満たされ雨上がりのキラキラとした雫が意気揚々と緑の葉から落ちる光景を見ていると全ての毒素を洗い流してくれるようで迸るアドレナリンに血流が騒ぐ。

クタ・レギャン通りの路地裏のコンドミニアムに住まいを構え湧き上がる感性や満ち溢れる時間の流れはとても緩やか調度品はすべてアンティーク調でピカソゴーギャンのようなアーティストが棲む魂を残すムーディなコンドミニアム
白の木造仕様でベッドルームとバスルームの天井は吹き抜けに。
夜は満点の星がルーフから眺める事ができて昼はやしの木が生い茂っている様子が窓越しに映り飽きる事のない充実した空間に情動の日々を過ごした。

ベランダのリクライニングチェアーにもたれビールを飲みながら頬に触れる心地のよい夜の潮風。
月明かりに照らされて波の音に全身が癒され
日常味わう事の出来ないこの静寂、
嗚呼なんて気持ちがいいのだろう。
研ぎ澄まされた極上の空間に身を任せていたい。
感性を存分に働かせる芸術家たちのインスピレーションもここなら果たせるような気がした。
現実には戻りたくない。
時間の構造全てが私にとって豊かなものになるほど
閉鎖していた自我状態は満たされ次第に膨らみを増し心地よい状態になっていく。
何かを見いだせるような錯覚に堕ちる時の調べ
現実から逃避する自分がいずれにおいても客観視できたのだろう。

風貌に思わず圧倒させられてしまうほどの関りたくないマフィア風中年男性、隣の住人はイタリア人でしょうか西洋人特有の太った肉体に薄い唇。

スキンヘッドの男は仕事の相手をテラスに呼び出して何か商談を交わしているよう。
私がその横を通り過ぎるたびにニヤリと笑って葉巻をくわえる姿は極悪人そのもの真っ当な仕事をしている人間にはとても思えない。
彼のやり手な商売ぶりを遠目で眺めていると片手間で大儲けを遠隔操作で楽しんでいるようにも見える。

彼の存在を知り始めてから一週間が経った頃の事。不思議な光景を目の当たりにしてしまうのだ。
日中テラスで葉巻を吸いながら 
「ハ~イ サナエ!!」
陽気に声をかけてくる薄い唇の口角は上がりニヤリと笑みを浮かべたその男はものすごい貫禄。
それはまさにハリウッド映画そのままの悪役ぶり。
一本吸い終わるごとに寝室に戻っては又新しい葉巻を持ってやってくる。
その一連の行動は実に不可解。
ひきつる顔が隠し切れないまま会釈をして彼の横を通り過ぎて行く毎日。その日もバリで調達したオリジナルのサマードレスを着て彼の横を通り過ぎると
「ヘイ サナエ ちょっと時間あるか?
 俺の秘密を教えてやろうか」
交わす術もなく部屋に案内された。
ベッドの横にデスクがありその上に置いてある白い紙の束の包みを一つ取り出し太い指で丁寧に開き葉巻を逆さにポンポンと白い粉を付け…
その行程を見れば誰だって何にとりつかれているかは一目瞭然。 
ハラハラしながらこの状況を見て見ぬふりをしたとしても口を割った時には私もこの人に殺されてしまうのではないか、
あまりのショッキングな光景に慌てていると彼はニヤニヤしながら
「誰にもいうなよ これがオレにとって生きる全てさSEX! DRUG! DRUNK!」
迫力のある重低音で口早に話の終わりの3WORDはお決まりの文句だった。
そう言い放つと彼はベランダに戻り毛深くて太い腕を肘掛において再び葉巻を吸い始める。
大胆に犯罪行為をしている強気なイタリアンマフィア。
確かインドネシアはドラッグ犯罪は死刑かとても支払えないような罰金、極刑だったような…

私の恐怖心とは裏腹に隣人は積極的に心を開いてくる。
無防備な彼の行動とニヤリと笑う顔に驚異を覚えその行為を受け入れる事に抵抗を感じながらそそくさと私の日課ともなっていた海へその日も向かった。

バリ日記は次回に続きます。

これからアジアでの紀行を連載にしてお送りさせて頂きます。
一年半に渡る放浪時代もあったのち又社会生活を営み全て私が体験した実話に基づいたノンフィクションアジア紀行です。
どうぞお楽しみくださいませ🍀